2022年6月6日

Westminster Lab の XLRケーブルを聴く③

電源ケーブル、ラインケーブルを純正で揃えた 英 Westminster Lab のプリ Quest とモノパワー Rei。玄人筋に高く評価されているのが頷ける音です。

私が前回お借りしたときは御覧の Marantz:SA-10 の足回りがまだ私的に調整未了だったり、単品で買ったら相当お高いであろう付属純正電源ケーブルがたまたま付いていなかったりしたこともあってどうも本領を発揮していなかった模様。しかしそれらの問題が解決した状態で今回改めて聴いてみると、

圧倒的な 高S/N が効くのでしょう、バルトークのオケコンは冒頭からただならぬ緊張感が漲る。うねりを重ねながら高まりゆく予感をこれでもかと掻き立てる。

ノイズ由来の雑味が皆無なのでペレアスでは弦の重なりが繊細極まりない。

エニグマ変奏曲では、

私がいつも立体的音像定位の再現性能をチェックするために聴いている「第13変奏における、左後方に何かを暗示する効果音」は、密度感と質量感を伴って左後方にポォッと浮かぶ。音像自体の立体感も凄まじい。

・・なんか沢山聴いちゃってますが笑、このピアノ協奏曲の録音は質感命と個人的に思っているところ、内田光子のピアノと管弦それぞれの質感が多彩に描き分けられつつ もつれ合う様がなんとも官能的。。いや、あまり気持ち良すぎるのも考えものじゃないか?もっと内省的に聴くべき音楽だってあるぞ?というわけで、

内省的に聴くべき曲の最右翼のひとつ、バッハの無伴奏を、敢えて Lucy van Dael の演奏で聴いてみる。御存知の通りこの録音は現代ハイファイ系で聴くと高域がキンキンきつくて曲の内省を阻害しかねないんですが、

あっぱれなことにこのシステムはルーシーが弾くヴァイオリンの音の芯、とりわけ中低域におけるそれに聴き手の注意を向けさせるところさえある。・・他でキンキンきつかったのは実は電磁波や振動由来のノイズ成分だったんじゃないか? いや、と言うのは Quest と Rei の筐体を改めてじっくり見てみるとですね、

これは Rei の天板ですが(下側がフロントパネル)

よく見てみると、カーボンとフロントパネル・サイドパネル間に隙間が設けてありますよね。フロントパネルとサイドパネル間にも。

ヒートシンク側のサイドパネルでも同様。

Rei の底面。半球状の真鍮製フット3点が真っ先に目に入りますが、やはり天板同様にカーボン板とフロント・リア・サイドパネルとの間に隙間が設けてあるのが判る。これは日本のファンダメンタル が採用する 「アイソレーテッド・ストレスフリー・シャシー」に通じるシャシー構造と言えるでしょうね。

そして敢えて真鍮をフットに採用したのは勿論測定あるいはリスニングテストの結果でありましょうが、重量と振動が加わる底面にアルミ・カーボン・真鍮という3種の異種素材を組み合わせることで巧みに素材特有の共振周波数をコントロールしていることも伺えるわけです。

で、地味だけど個人的には他でも真似して欲しいところがこれ。

スピーカー出力部と、信号入出力部、それぞれの端子付近にカーボンが使われていますよね。1枚のカーボンプレートに両端子を収めていない。敢えて分けている・・。

以前 米 NORDOST の輸入元エレクトリの担当者さんと立ち話していたときにスピーカーケーブルの適正な長さが話題になったんですが、この端子部を見て私はそのとき伺ったお話を思い出しました。オーディオケーブル界で恐らく最強の測定装置を使用し、その最強の測定データに基づいてケーブル設計開発をしている NORDOST(NASAと仕事をしている会社のオーディオケーブル部門なので技術的・設備的には間違いなく業界トップクラスでしょう) は、スピーカーケーブルの長さについて以下のように考えているというのです。

「スピーカーケーブルは、オーディオシステムにおける最大の振動源であるスピーカーに直接繋がっているだけに全ケーブル中最も大きな振動にさらされるケーブルなので、ラインケーブル等と同じ発想で短ければ短いほど良いとは言えない。短か過ぎるとスピーカーから伝わる振動が減衰しきらないままパワーアンプまで伝わってしまうからである」

・・つまり、シャシーの(素材)構成と組み上げ方にここまで拘った Westminster Lab は、スピーカー由来の振動がスピーカーケーブルを介してパワーアンプ内部、そしてお隣の信号入出力部に極力伝わらないようにする為にこのように両端子を囲むカーボンプレートを分離した上で配したはずだと考えていいのではないでしょうか。

勿論電磁波対策でもあるでしょうが。意外とこの問題意識が見て取れるパワーアンプって無いんですよね。。

スピーカー出力端子は独WBT製。
電源インレットは FURUTECH:FI-03

で、プリの Quest は入出力端子部にカーボンが取り付けられている訳ではないんですが、今回お借りした試聴機は内部の各所にカーボンファイバーシールドを贅沢に配した仕様だったようです(オプション)。そしてシールドに一般的な金属製ではなくカーボンファイバー製を用意するのは勿論、前回聴いた ULTRA-C と同じ考えに基づいてのこと。

ケーブルと同じ技術思想でアンプをつくる・・

「ケーブルで音は変わらない」と主張する人達に Westminster Lab のフルシステムを聴かせてみたい S田でした。