2022年8月7日

DH Labs:Pro Studio と Pro Studio Progressive

米 DH Labs のアナログRCAケーブル、Pro Studio(左)と Pro Studio Progressive(右)

私が寝室のシステムで使っている LUXMAN のプリメインアンプ L505f には、プリアンプあるいはパワーアンプとして使うこともできるように PRE OUT と MAIN IN 端子があります。

私はこれまで同社製のとても短いRCAケーブルで両端子を繋いでいましたが、先日ふと思い立って WIREWORLD の Equinox 8(EQI8) に換えてみました。

アンプ自体の価格が新品時約20万円なのでバランス上あまり高額なものは選べないものの、音を良くしたいがためのケーブル交換なので笑クオリティは確保しないと意味がない。その点、EQI8 は導体や絶縁等に加えプラグにもこの価格帯には珍しく良いものを使っているのが今回の購入の決め手になりました。

このプラグ Silver Tube RCA Plug は、コンダクタに 4N の無酸素銅を採用しています。ケーブル本体の純度にどれだけ拘っても、両端のプラグに使われるコンダクタが導電率の低い真鍮だったりする例が今も非常に多い中これは貴重。そして実際音質は劇的に向上したのです。いわゆる今まで聴こえなかった音が沢山聴こえるようになったってやつ。

で、話が変わるようですが私のメインシステムはアンプが 英QUAD 22+II という非常に古いモノで、なぜかって私はもっぱら古い録音のクラシックを聴くからなんですが、

古い録音のCDを聴くときはだからやっぱり同じイギリスの、古典的な音調で音楽を奏でてくれる Sonneteer の SACDプレーヤー Bronte を使います。そして Bronte と実に相性が良いのが

米DH Labs のロングセラー、Pro Studio

その名の通りプロスタジオ用に設計開発されたラインケーブルなんですが、オーディオファイルとして見ても、テフロンより優れた特性を持つ絶縁を採用していたり、規格外に厳重なシールドを施されていたりする上に、

アルティメット RCAコネクターという、コンダクターに導電率 93% を誇る高純度銅が使われていたりしてむちゃくちゃ高性能で造りが良いプラグ、しかも単品の税込定価が 26,400円(!)という Pro Studio RCA/1.0m の価格(税込定価 58,300円)を考えると破格と言っていい超高級プラグ、を採用しているのもポイント。

けど「プロスタジオ用」とひとくちに言ってもですね、オーディオ専門店に足繫く通っているとたまに、「じぶんはスタジオで働いている」という方が「うちのスタジオでこのケーブルを使っているんだけど凄く音がいいからお宅で取り扱わないか?」と飛び込み営業で来てたりする風景を目にすることがありますが、

興味深いことに彼らは「プロのスタジオで使われているんだから、アマチュア(=オーディオ専門店のスタッフとお客さんのことでしょう笑)が聴いたらプロのレベルの高さに驚くだろう」と信じて疑わないんですよね。けどよくよく話を聞いてみると彼らは導体の種類くらいは把握していても、「絶縁は何を使っているのか?」「プラグはどこのやつか?プラグのコンダクタ部の素材は?」等専門店のスタッフに訊かれるとしどろもどろ笑。結局、「アマチュア」なオーディオファイルが使っているケーブルよりクオリティが低いのが内容から明らかだったりするんです。全部とは言わないけどそういうケースの方が多い笑。

チッコリーニを魅力的に鳴らせる現行ケーブルは実際とても少ない。だが Pro Studio で聴くチッコリーニは格別なのだ。。

しかし DH Labs は他ならぬオーディオ専門店で長く取り扱われ日本にも愛用するオーディオファイルが多いことからも判るようにそのての「プロ用」とはモノが違っていて笑、「アマチュア」的にも極めてレベルが高い。

というか、本当のプロ用ってこういうことだよねとも思うんですが、

「アマチュア用」笑オーディオケーブルってやたら高いですよね?最近特に。

けど、DH Labs のケーブルって Pro Studio に限らず、導体や絶縁、プラグ等のハイエンドな内容からするとどのモデルも他社製品より随分と安い。不思議に思って以前輸入代理店の方にその理由を聞いたらですね、「オーディオファイル向けだけにケーブルを作っているメーカーだと量産効果はほとんど働かないだろうが、DH はスタジオ向けに、オーディオファイルが使うのとは桁違いに長尺のケーブルを大量に生産し納品している関係で量産効果が大きく働くので単価をかなり下げられる。」と教えてくれたことがありました。

・・「プロ用」が正しく「アマチュア用」でもある素晴らしい例じゃありません?

そんなこんなで、Pro Studio を私は QUAD 22+II 、Bronte、そして ガラード401 & Sonneteer Sedley と組み合わせて愛用しているわけです。コスパが高いだけでなくバランスが素晴らしい(バランスの良さもスタジオ向けゆえではないだろうか?妙な色付けをするケーブルだと仕事にならない気がする笑)ので、古い録音を古い機材で鳴らしても古い良さを損なわないのが Pro Studio。今日的ハイファイ性を価格破壊的にレベルの高い導体・絶縁・プラグ等で実現しつつ古い録音を聴けるケーブルって他にあまり無い。

ヴィンテージ機器を使うようになると最近のケーブルにはせっかくの古い機器の良さを損なうものが多くて困りますよね(^^;)。なので WE系とかを使う方が多いわけですが、実は DH Labs の Pro Studio はイケます。ただQUAD 22より端子間の間隔が狭い場合はアルティメットコネクターを挿すのは厳しいでしょうから、やはり径の小さなスイッチクラフトのRCA端子を使ったケーブル等にせざるを得ないと思いますのでそこはご注意を。

しかし例えばヘルムート・リリングのこのボックスは、録音年代が古過ぎず新し過ぎずだからなのか、録音の特徴からか、Bronte と Pro Studio で 聴いてもどうも私にはピンとこなかった。

ピンとこないままに頑張って 全172枚を聴いた私は実際かなり偉かった気もしますが、音楽愛好家そしてオーディオファイル的にはやはり納得がいかない。

そして新しめの録音用の Marantz:SA-10 と Pro Studio の組み合わせで聴いてもまだピンとこなかったので私は、実は発売開始時に試聴して非常に気に入って購入宣言したもののなんやかやでまだ買っていなかった、Pro Studio のパワーアップ版である Pro Studio Progressive を先日買ってずっと慣らしていたのです。

ノーマルのPro Studioとの違いは、電磁波対策としてノーマルの編組シールドにフォイルシールドを加え、振動対策として制振処理層を加えた上に更に白と黒のインシュレーターを装着、そして外皮にメッシュを施している点であるが、この両対策が実に優れていて、Pro Studio1流のウェルバランスを全く損なうことなく、音場・音像の情報量を激増させるのだ。

結果は大当たり。SA-10 の解像度をやはり価格的に Pro Studio は表現しきれていなかったんでしょうね、Progressive はリリング指揮のカンタータを正しく解像し、フリッツ・ヴェルナーやカール・リヒターより情感表現は淡泊なれどBCJにもある種通じる客観的で端正なカンタータもこうやって分析的に聴くといいんだぜとやっとわからせてくれました。

アーノンクールBOXも、正直 Bronte と Pro Studio で聴いてもなんか違ったんですが SA-10 と Progressive のコンビだともう納得。空間の前後左右上下が各楽器の配置と各楽音の拡散の仕方で目に見えるように伝わる。キレの良さもやっと出た。そもそも録音かなり新しいのよねこのBOX。

こうなると SA-10 をDACとして使って聴いている TIDAL や Amazon Music HD で聴く音源も俄然楽しさを増すわけです。ULTRA HDで聴くARS NOVA COPENHAGEN が解像度高く冴え冴えとして気持ちいい。Pro Studio のときよりクララ・ハスキルやバックハウスのピアノがスルッとなんだか楽に出てきたのは電磁波と振動の悪影響を免れたから?とにかく、音数が増えたけど音色と質感は Pro Studio で聴いていたときと変わらないのが素晴らしい。駄目元で押してみた「腰痛に効くツボ」が本当に効いて驚いているS田でした。