米DH Labsの輸入代理店として有名なけーぶる舎から、同社オリジナルのスピーカーケーブルが2機種発売されました。
こちら、黒いメッシュの方が「Western Electric SP-4」。
その名の通り導体には、かのウエスタン・エレクトリックのものを採用。
「SP-4」は錫メッキした銅単線。それを左右各チャンネル4芯。ブレイドすることにより電磁波対策効果を得ています。
白いメッシュのこちらは「Western Electric SP-6」。こちらの導体はなんと無メッキ!ウエスタンの導体を採用したケーブルと言えば錫メッキというイメージがありました。無メッキのウエスタンは私聴いたことがありません。非常に珍しいです。そして「SP-6」は左右各チャンネルが6芯ブレイド。
ウエスタンの導体を採用したスピーカーケーブルは昔からそこそこ流通していますが、ほとんどのものが真鍮製のプラグを装着していますよね。で、銅の導電率を100とすると真鍮の導電率は実は30から40といったところ。しかし、
今回けーぶる舎が出した「SP-4」「SP-6」はさすがDH Labsの輸入元!両端のプラグ(Yラグ、バナナ選択可能)に純銅を採用。天下のウエスタンの導体の魅力と性能を、低い導電率のプラグで減じることがありません。
大きなスプリッターが印象的。両端に装着したこのスプリッターには振動制御効果がありそう。メーカーによると両ケーブルは高収縮のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)やドイツ製の制振材、さらに専用制振マトリックスを搭載することでS/N向上とレゾナンス最適化を実現しているそうです。
「SP-4」はスピーカー側のスプリッターが黒。
もちろん「SP-6」もプラグは銅製(金メッキ)。
「SP-6」はスピーカー側スプリッターが白で、
アンプ側スプリッターが黒。
最初に「SP-4」を繋いで聴いてみます。
タン・ドゥン『交響曲1997「天、地、人」』。音色がヴィンテージ独特のダーク寄りなのでうわずらない。まぶしくない。ヨーヨー・マのチェロは音色が濃く彫りが深い…心身にじんわり沁みる!太鼓群はアタックが強く重い。
『マルコプーロス:オルフェウスの典礼』は冒頭の太鼓が明らかにアタックが強く音色が濃い。このアルバムは現代ハイファイシステムで聴くと明る過ぎ・薄過ぎ・綺麗過ぎになりがちなんですがこのケーブルでなら落ち着いて聴ける。なんというか、大ホールの2階席3階席の後列で聴いたときにありがちな音がブレンドされ過ぎる感じではなく、1階席的な直接音の強さと旨味を堪能させてくれる感じですね。
古い録音だとどうでしょうか?
グリラー四重奏団のCD BOXから、「ハイドン:十字架の上のキリストの最後の7つの言葉」。こういう音源はアナログのオリジナル盤で聴きたいところですが、CDでも「SP-4」だと聴ける…ダークな音色で表現の彫りが深いのでシリアスなこの曲と演奏に沈潜できる。
グリンベルグのシューベルトもいい。ピアノに芯がある。筆圧の高低レンジが広い。古い録音を再生するときに欠かせない階調表現が豊かで巧みなんですよね。
バーンスタイン指揮・イスラエルフィルハーモニー管弦楽団『マーラー:交響曲第9番』。ヴァイオリン群に肉厚感とくすみと艶。低弦のピチカートが彫り深い。金管木管の陰翳の深さ!そしてティンパニに聴いたことがない凄みがあって心臓に響いてくる…。
「SP-6」に繋ぎ換えると、
「SP-4」のダークな音色と強くて重いアタック、そして豊かな階調表現はそのままにハイファイ性能がガンッと上がって驚く。とにかく音場が静か。タン・ドゥンは低いノイズフロアにヨーヨー・マの独奏チェロの音像がポウッと浮かび上がり、鐘の倍音が解像度を増してきめ細やか。残響音の音数も多い。
マルコプーロスもS/Nと解像度がグンと高まり、木管の音像が埋もれない。ナレーションが明瞭!グリラーは陰翳の深さはそのままに、演奏とテープヒスの分離が向上。
グリンベルグは左手・右手のそれぞれをより分析的に聴き分けられるようになりつつ、音色に深みがあり滋味深く、デリカシーが「SP-4」より向上。そしてバーンスタインは音場に奥行きが出て、イスラエルフィルの弦がより品位を高めて崇高なまでに美しい。各楽音の残響音を消え際まで味わい尽くしたくなる…。
「SP-4」「SP-6」ともに、買えるときに買っておかないと後で悔やむタイプのスピーカーケーブルですね。深い陰翳と高いハイファイ性能を見事に両立させた「SP-6」にもおおいに魅かれましたが、私はひとまず「SP-4」をバイワイヤで繋げるように2組購入し、サブシステムに繋いでエイジングを始めています。S田でした。